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最高裁、家族の賠償責任を否定
認知症の男性が徘徊中に列車にはねられ死亡した事故を巡り、JR東海が家族に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第三小法廷(岡部喜代子裁判長)は1日、男性の妻(93)と長男(65)の賠償責任を認めず、JR東海の請求を棄却する判決を言い渡しました。
家族側勝訴が確定したということです。
事故は、2007年に発生しました。
男性が列車にはねられた事故で、JR東海が『電車に遅れが出た』として、同居の妻や当時、首都圏に住んでいた長男らに約720万円の支払いを求めていたのものです。
民法では、責任能力のない人が第三者に損害を与えた場合、代わりに親などの監督義務者が責任を負うとする一方で、監督義務を怠らなければ例外的に免責されると定めているのです。
1審・名古屋地裁は長男を事実上の監督者と判断し妻の責任も認定して、2人に全額の支払いを命じたのです。
一方、2審名古屋高裁は、長男の監督義務を否定したものの、『同居する妻は原則として、監督義務を負う。相当に充実した介護体制を構築していた』などとして、妻に半額にあたる約360万円の賠償責任があると判断し、減額をしたのです。
JR東海側と家族側の双方が上告をしていました。
高齢者の4人に1人が予備軍とされ、平成27年で約520万人、37年では約700万人まで増加すると厚生労働省が推計する認知症。
最高裁が示した判断は、認知症など高齢者介護の現場に影響を与えそうです。
今回の裁判の争点は、認知症高齢者を介護する家族の監督義務で、民法714条では認知症などが原因で責任能力のない人が損害与えた場合、被害者救済として『監督義務者』が原則として責任を負うと規定しているのです。
ただ、同居していた妻は高齢の上、『要介護1』の認定を受けていたなど、『監督義務を負わせるのは酷だ』と、1・2審判決に批判も多かったのです。
また、介護の方針を決定していたとされる長男の責任についても、認知症を抱える家族から、『同居していない家族に責任を負わせれば、家族による積極的関与が失われ、介護の現場は崩壊する』と反発の声が出ていました。
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