男子生徒から児相に何度もSOS
各都道府県の児童相談所間の連携が問題視されましたが、過去にも同様な事案がたくさんあったのです。
それに、問題は他にもあり、児相の専門家の育成や人員不足、権限が与えられていないなどの様々な問題も浮き彫りになってきています。
両親から虐待を受けて、相模原市所同相談所(児相)に通所していた男子中学生が自殺を図り、今年2月に死亡していたことが市関係者の話で分かりました。
男子生徒は、児相に保護して欲しいと繰り返し訴えていましたが、相模原市児相は見送っていたということです。
児相には親の承諾なしに強制的に子供を引き離して保護する職権が認められており、厚生労働省は指針で、子供の安全を再優先に躊躇せず運用するように求めているのです。
市関係者によりますと、男子生徒の通っていた学校の教諭が2013年秋に、生徒の顔のアザを不審に思って市に通報しました。
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相模原市児相が虐待案件と認定し、両親は児相の呼び出しに応じ、定期的に男子生徒と通所して指導を受けていたということです。
ただ、暴力や言葉による虐待行為は止まらず、男子生徒は深夜にコンビニエンスストアに駆け込み、警察官に保護されたことも有ったということです。
児相職員には、『家に居場所がない』、『児童養護施設で暮らしたい』等と度々SOSを出していたということですが、児相は『緊急性はない』として保護しなかったとの事です。
しかし、14年10月上旬に、両親が児相の指導に反発し、男子生徒を通所させることを止めさせたというのです。
児相は男子生徒の学校に『注意して見守ってほしい』と依頼をしましたが、この時点でも保護を見送り、両親や男子生徒との連絡を取り合うことも中断したのです。
同月末に、学校側から『虐待が続き児相に助けを求めている』との通報を受けましたが、家庭訪問などを行わず対応を学校に任せていたという事です。
男子生徒は、この半月後の11月中旬に家を飛び出し、近くの親族宅で自殺を図ったとの事ですが、遺書はなかったということです。
しかし、家を出る直前にも親から暴力を受けていたということです。
男子生徒は意識不明の状態が続いていましたが、約1年3ヶ月後の先月28日に死亡しました。
学校関係者は『野球が好きで明るい子だった。あれだけ助けを求めていたのに救えなかったのはやり切れない』と話しています。
相模原市児相の鳥谷明所長は、男子生徒の保護には両親が同意していなかったとしたうえで、『職権で保護するだけの差し迫った状況ではないと判断したが、亡くなった事実を重く受け止め、このようなことが二度と起きないようにしたい』とコメントを出しています。
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厚労省は職権保護について、『保護者の反発恐れて控えるのは誤り』と指針に明示しており、今国会でも親子を引き離す必要がある虐待への対応をしやすくするために、児相内に弁護士の配置を義務付けるなどの法改正を目指しているのです。
相模原児相の2014年度の職権保護は、一時保護全体の7%の19件ありました。
市関係者は、『保護者と対峙する職員のスキル向上、体制強化がなければ、権限が与えられても行使できない』と話しています。
名古屋児相では12年度、警察官を加えた一時保護専従チームを設置したそうです。
これを機に職権保護が大幅に増え、今年度は1月末時点で404件と全体の67%を占めているのです。
児相の権限強化を『子供を守る』ことにつなげるためには、職員の育成、そして警察、自治体などとの一層の連携が求められているのです。
相模原児童相談所では、昨年12月に職員が一時保護中の少女たちを全裸にして、所持品検査をしていたことが明らかになり、問題を検証した有識者からは職員の実務経験の浅さを指摘されていました。
同児相は、昨年8月にも子供たちが職員に要望などを伝える『意見箱』の記入用紙が1枚無くなたことから、女性職員2人が少女9人に所持品検査を実施したのです。
問題発覚を受けた市は、職員に聞き取りをした上で、弁護士らの意見を聞き、今月15日に検証報告書を発表したばかりです。
同児相は、政令都市移行に伴い2010年に開設され、一時保護署は14年に開所したばかりで、報告書は問題の背景として、『職員の実務経験が浅く、専門的指導、助言が十分に受けられる体制ではなかった』と指摘し、更に『刃物などとは異なり、緊急に所持品検査を行う必要はなかった』と批判しているということです。
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