『性分化疾患』手術しないで性別変更が可能に
男性ホルモンの分泌が過剰になる先天性の疾患により、身体は女性だが自分を男性と認識し、苦しんできた20代の2人に対し、家庭裁判所が2015年と16年に、女性の体のまま戸籍を男性に変えることを認めていたと事が分かりました。
『心の性』が『体の性』と一致しない人が戸籍の性別を変更する際、日本では手術で生殖機能を無くすことが求められていますが、国際的には人権侵害とも批判されているのです。
二人は東日本と西日本に住んでいるとのことで、岡山大学病院を受診しています。
戸籍の記載の誤りは訂正できると定めた戸籍法に基づき、それぞれの地域の家裁に家事審判を申し立て、性別変更が許可されたそうです。
同病院の大島義孝医師(精神科神経科)によりますと、『出生時に性別判定が難しいことの有る『性分化疾患』の一種、『21水酸化酵素欠乏症』と診断され、胎児期から男性ホルモンが過剰に分泌され、身体が女性であることに強い違和感を持つことのある疾患だ』・・・・・と云うことです。
性分化疾患は、染色体やホルモン分泌の異常が、卵巣や性器の発育に影響し、男性か女性かを明確に判断しづらいことのある病気の総称です。
成長後に自分の性別に違和感を持つことも有るのです。
日本小児内分泌学会の推定では4500人に一人の割合で生まれるとのことですが、一方『性同一性障害』は身体的に男女がはっきりしているが性別に違和感がある状態で、医学的には原因が特定されていません。
性同一性障害特例法とは
両家裁は二人が既に男性として生活し、社会的な性別として確立していることなどを考慮し、医療上の理由などで子宮や卵巣を摘出する手術を受けるのが難しく、戸籍上男性なっても妊娠・出産できる可能性は残していますが、問題としなかったそうです。
GID(性同一性障害)学会理事を務める針間克己・はりまメンタルクリニック院長は『性別を判断する比重を「体」から「心」へと移した結果で画期的』・・・・・と評価しています。
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『心の性』と『体の性』が一致しない人を巡っては、04年に施行された性同一性障害特例法で、性別適合手術で『体の性』を『心の性』に合わせることが性別変更の要件とされています。
一方、世界保健機関(WHO)など国際機関は14年、手術の強要は人権侵害で、自己決定や人間の尊厳の尊重に反するとの共同声明を発表、日本でも同学会理事会が今年3月に声明を支持することを決めたのです。
谷口洋幸・高岡法科大教授(国際人権法)は『2つの家裁の判断がどこまで普遍化されるか分からないが、日本でも手術要件の撤廃に向けた動きが活発化してくれば、後押しする力になるだろう』・・・・・と話しています。
生殖機能の除去は、精神的にも経済的にも重い負担に
日本精神神経学会の調査によりますと、心と体の性の不一致で国内の医療機関を受診した人は2015年までで延べ2万2000人以上に上るそうです。
これに対し、04年の性同一性障害特例法施行後、戸籍の性別を変更した人は、16年末までに約6900人に。
専門家は性別適合手術が精神的にも経済的にも負担となり、性別の変更を諦めている人が多い可能性を示唆しています。
性別適合手術は健康保険の適用外で、実施できる医療機関が少なく、タイなどで受ける人が多いということです。
費用は国内外を問わず100万~200万円程度掛かる上、術後の不調に苦しむことが有るそうです。
当事者や医療関係者からは、健康な体にメスをいれることへの疑問の声も上がっているのです。
GID学会によりますと、海外では手術を性別変更の要件から外す動きが進んでおり、既に英独仏など約39カ国では手術なしでも性別変更が出来るということです。
日本でも近年、性的少数者(LGBTなど)の人権に関心が高まっており、『心の性」を重く捉えた今回の家裁の判断は、時代の流れに沿ったものと言えるのではないでしょうか。
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