アダルト・ビデオ（AV)業界、新ルールは１０項目、しかし現場への浸透が課題に
アダルト・ビデオ（AV）への出演強要が問題視されていることを受け、今年４月に発足した第三者機関『AV業界改革推進有識者委員会』が半年間の調査を終え、東京都内で１０月４日、報告会を実施したのです。
出演強要を防ぐ仕組み作りとして、メーカーやプロダクションが守るべき新ルールが、来年１月から実施されることが発表、改善策として共通契約書の仕様や、作品に５年間の使用期限を設けることなどを盛り込んだと云うことです。
昨年春に、人権団体ヒューマンライツ・ナウが被害の報告書を発表後から取り沙汰されるようになった強制問題、被害者の支援に取り組む複数の人権団体が、スカウトされた女性がAVと知らないでプロダクションと契約したり、契約後にAV出演を拒否すると違約金を求められたりした例を報告しています。
こうした被害を防ごうと、AV業界の要請で設立されたのが同委員会なのです。
『芸術と法』が専門の志田陽子・武蔵野美術大教授が代表委員を務め、他に表現の自由問題に詳しい山口貴士弁護士ら３人が委員を務めています。
委員会が定めたルールを守って制作した作品を『適正AV』と定め、適正AVが守るべき規則を提案してきたのです。
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新ルールは１０項目に
報告会では、新たに適正AVが守るべき１０項目の新システムが発表されました。
同委員会はメーカーやプロダクションへのアンケート調査、引退した元女優への聞き取りを行い、来年１月から実施する契約書などに関する新ルールを設定したのです。
その中で、強要問題に大きな影響を与えそうなのが、共通契約書と第三者意思確認書です。
これまで女優に渡される契約書の中には、AVに出演することをも正確に伝えない、曖昧な内容のものも有ったそうです。
今後はAV出演であることが分かる契約書を使い、さらに女優に出演したいという意志があるかどうかを第三者が確認することになります。
AVAN（代表・川奈まり子さん左側）
意志の確認は、元女優の川奈まり子さんが出演者を守るために設立した『表現者ネットワーク（AVAN）』が担うことになっています。
また、一度撮影すれば永久に作品が残り、何度も再編集されてオムニバス盤が販売され、引退後もインターネットで配信され続ける現状を変えようと、作品使用期間を５年に設定、今後は５年が過ぎて女優がメーカーと再び契約しなければ、作品は配信されなくなるのです。
他にも、
▽ 発売した作品も再編集した別の作品を使う場合には、２次使用量を女優に支払う
▽ プロダクションは出演料を開示する
▽ 相談窓口の設置
・・・・等などをルール化しました。
ただし、法的な強制力はありませんが、従わなければ同委員会の定める『適正AV』から外れ、業界団体であるNPO法人知的財産振興協会（IPPA)から脱退させられるなどのペナルティーが有るのです。
志田代表委員は、『法律家が考えたルールを現場に浸透させるにはどうした良いかを考えてきた。
手放しで浸透するわけではない。さらなる尽力が必要。
一層の見守りをしていきたい』・・・と話しています。
また、委員の一人で犯罪学が専門の河合幹雄・桐蔭横浜大教授は、『契約を細かく丁寧にやっていくと「面倒だから簡単な方が良い」と違法な作品に出演者が流れてしまう懸念も有る。しかし、適正AVなら５年で作品が消えるということがより広く伝われば、「それなら適正AVの方がいい」と考えてもらえるのでは』・・・・と、話しています。
『着実に前進しているが、当事者に届いていない。完成度は８割』と、山口弁護士は指摘します。
第三者による意思確認についても、年間数千人がデビューすると云われているAV女優全員の意志をAVANが一人ひとり確認することは不可能だ。
川奈さんは、『AVの撮影で行われることが一目で分かるような表を作って、読んで理解したら送り返してもらうなど、方法を考えているところ。
人員が少ないが、やれることはやっていきたい』と話し、具体的な方法は来年１月までに決める予定とのことです。
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